わが人生最高の10冊(「週刊現代10/6号」より)

高村薫(作家)
 日本語に「感応する」ことこそ小説を読む喜び
高村薫さんのベスト10冊
1位 『暗い絵』

暗い絵・顔の中の赤い月 (講談社文芸文庫)

暗い絵・顔の中の赤い月 (講談社文芸文庫)

京大で反戦運動に関わった著者の体験から書かれたデビュー作。「高利貸の親父から食堂の娘まで小さな脇役が生きている」
2位 『土』
土 (新潮文庫)

土 (新潮文庫)

貧しい一家の生活を中心に、農村の自然や風物を克明に活写した農民文学の名作。漱石の推薦で東京朝日新聞に連載された
3位 『春琴抄
春琴抄 (新潮文庫)

春琴抄 (新潮文庫)

大阪の薬種商の娘、春琴は盲目の三味線奏者。店の丁稚で、三味線の弟子でもある佐助。二人の数奇な関係を耽美的に描く
4位 『ユリシーズ』Ⅰ〜Ⅳ
ユリシーズ 1 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)

ユリシーズ 1 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)

実験的な文体で描かれるダブリンの一日。「物語が突然破れていく様がたまらなく好きです」
5位 『アブサロム、アブサロム!
アブサロム、アブサロム!(上) (岩波文庫)

アブサロム、アブサロム!(上) (岩波文庫)

時代は南北戦争前後、舞台はアメリカ南部。「日本人が知らない、前近代のアメリカがある」
6位 『詩集 わがひとに与ふる哀歌』「思索の言葉があった時代の詩。『晴れた日に』は60〜70年代の青春を象徴していると思う」
7位 『純粋理性批判
純粋理性批判 上 (岩波文庫 青 625-3)

純粋理性批判 上 (岩波文庫 青 625-3)

人間の理性と限界を見極めたカント三大批判書の一つにして、ヨーロッパ近代哲学最大の古典
8位 『磁力と重力の発見』1〜3
磁力と重力の発見〈1〉古代・中世

磁力と重力の発見〈1〉古代・中世

「個人的に最も不思議だと思うのが重力。古代ギリシャからニュートンまで興味深い発見史」
9位 『新視覚新論』
新視覚新論

新視覚新論

「私が見る」と言う時の「私」とは何か。「見る」とはどんな状態か。知覚の構造を追求する
10位 『政治学講義』
政治学講義

政治学講義

「『新リア王』で政治家を書く時に手にした。政局には興味はないですが、政治哲学にはあり」
最近読んだ1冊:『死の所有』
死の所有―死刑・殺人・動物利用に向きあう哲学

死の所有―死刑・殺人・動物利用に向きあう哲学

「死刑、安楽死、クローン、動物実験、殺人・・・。白か黒か簡単に結論の出ない生命倫理の問題が数多くあります。本来、人格は所有できても、命は所有できないのに、死が所有されると考えられているのはなぜか、という非常に興味深い考察」