草原への郷愁

スーホの白い馬』を読み終えて、絵本玉手箱に一緒に収める本は・・・・

街道をゆく (5) (朝日文芸文庫)

街道をゆく (5) (朝日文芸文庫)

「淡く薫る草原、満天の星。踏みしめる草花の一本、一本に つよい哀愁を感じた」
              (2008年新装文庫版帯より)
まず表紙を見て、『スーホの白い馬』の最初のページの虹が描かれている絵を思い出しました。

『モンゴル紀行』は、モンゴルに憧れを抱き、旧制大阪外国語学校(現大阪大学国語学部)蒙古語学科を卒業された司馬さんが、モンゴルと日本が国交を回復した翌年の1973年にモンゴルを旅された記録です。
※モンゴルと国交を回復した1972年は、沖縄が本土へ復帰
 した年なんですね。

国交は回復したとはいえ、まだモンゴルとの直行便はなく、当時はソ連経由でモンゴルに入国する手段しかなかったようで・・・モンゴルに入国するまでに二日間もソ連に滞在しなければならず、その上、司馬さんにとってはソ連の官僚社会の印象が重苦しく感じたようで、「モンゴルへは行きたくても二度と行くことはないだろう」と書いています。

しかしソ連と同じ社会主義国家であるモンゴルは、遊牧民の民族性から重苦しい雰囲気はまったくなく、司馬さんが憧れ思い描き続けていた以上の地であったでしょう。

モンゴルの歴史、風土、文化、そしてモンゴルの人々の日本に対する様々の思いが語られていきます。

この本は、子供のころまでくっきりモンゴル斑点がついている私たちにとって、モンゴルが日本の一番近い国でありあるかもしれない?と考えさせられる本です。

ただモンゴルへ日本から定期便で5時間で行けるようになり、モンゴル社会も大きく変化を遂げたであろう現在、司馬さんが今のモンゴルの地に立った時、どう書かれるか興味があるところです。